kazutaka_ueyama’s blog

日記かな?

安保法案 が成立したわけだが 

安保法案について今の私としてどう考えるのか、と言う事に関して。

 まずこの法案に関して法の趣旨に理解を示せたとして、では今の立法プロセスを見た上でこれに正当性を見出せるかと言うとそれはやはり難しい。

 安保法案と言うのは集団自衛権の行使と言う領域に踏み込んでいると言う事でこれまでの防衛政策の中でも一番憲法とのコンフリクトが大きく、憲法との整合性の部分に関してこれまでより多く工数を取って説明に費やして然るべきと言う事に成る筈なのですけどね。

 この法案に関して、どちらかと言うと賛成的になるであろう諸説を一通り見渡した限りだと主張者の内心としても現行の憲法下で立法させる事に関しての矛盾等に薄々ながら自覚を憶えているものも決して少ないんじゃないかと思いました。

(ここで憲法解釈に関する個別の見識の比較は控えてそういうのは別のオピニオンにお任せするとして)仮定として現憲法との整合性が見出しにくいとの結論を回避する事が難しいとなる場合、順序としては憲法改正を行った上で立法に着手するのがどう見ても求められる筋になる訳です。安保法案の立法を改憲より先行させようとするのは何故なのか。これを正当化させる為には何らかの事態や状況の説明が求められる様に思われますが今まで各所で行われている説明などはそれに相応しい内容かと言う事ですよね。

 本件に関して現時点で立案を即効させるべき根拠として周辺諸国の外交的懸案事項(まあ具体的には中国と言う事になるのでしょう)が主となるようで。自分はその様な懸案事項に関してそれを全く考慮すべき価値の無いものとせよ、等と言う様な思考は毛頭御座いません。問題は周辺諸国の外交懸案の事態レベルは果たしてどの程度なのか、それらは立法プロセスを間引いてまで対応すべきな緊急性や切迫の度合いを伴っていると言う事態の認識として多数で共有可能なのかと言う事です。自分としてはその様な認識共有が完成しているとは思い難く、ここを本件に関する筆頭の問題点として捉えている訳です。

 

 

 私が感じ取る認識感覚として今の時節では性急に過ぎる様な立法を行う事で生ずる弊害の方が大きい様な気がしますがね。まず本件に関する法学者諸氏の駄目出しと言うのは立憲主義の遵守の必要性を説くと言うのが第一の趣旨で有って必ずしもこの法案の立法価値を頭ごなしに否定せんとするばかりでは無いと言う事です。*1本件の立法を行うに当たって立憲主義の尊重遵守を前提として約束できると言う限りにおいてなら、円滑な立案に関し、もしかすれば助け舟の様な何かを出して貰えたかも知れないのにその機会を逸失してしまったかも知れません。例えばこの法案に対しての違憲訴訟を主導しているのがそもそもは改憲派論客として名を馳せた法学者と言う事からもわかるように、本来は味方になってくれたであろう存在まで相対させる様な構造が出来上がっている訳ですね。

 

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そして今回の様なやり方での立法は憲法改正と言う手続きに対して(主に心理的な方面においての)ハードルを上げてしまいました。これはもう間違い無いですね。もしも今後改憲を見越しているのであれば今回の様な成り行きは回避すべき失点として改憲を進めたい側に取って不利な展開が作り上げられる様になる思いますがそれを払拭するのは可能なんでしょうか。

 

 自分は絶対の非軍反軍主義者では無く、防衛に関する政策論議自体は有意な価値が有ると考えています。その上で日本におけるこの種の政策論議にネガティブな印象を拭えなくしてしまう事に関して僕が抱いている発案提起者側の問題点としては適正手続きやプロセスの正当性を軽視していると言うまさに今見られる様な態度問題がかなりのウェイトを示めています。

 国防分野は政策論議の中でも統治の根幹に近く、また日本の国家運営の歴史上でも禍根を残してきた分野と言う事でこの領域でテーマが出来た時に警戒心を抱かせるのは別に不自然では無いですね。多少非効率には見えても政策立案やプロセスの正当性を厳密に問う理由は無くならないでしょうね。自分としては自衛隊の根本的な有り方に関する事項など、近年になって防衛に関してクレバーに議論できる様な土壌がようやく出来上がってきた筈なのに昨今の騒動はそれらをご破算にしかねない様に感じます。果たしてそれで良いと言う事になるのでしょうか。